お前のデザインだとコンペに勝てない

 top2012_0117.jpgこの業界で仕事を始めて約10年が経ちました。早いものです。

新人の頃を振り返りながら、今は何を心がけ、何を考えているのかを
書き留めていこうと思います。
 
現在、肩書きはWEBデザイナーです。
なんとなくですが、デザイナーと聞くと絵が描ける、イラストが描ける、
などのアート的な発想がくると思いますが、自分の場合は絵とか描けません。
 
それでも「WEBデザイナー」という肩書きが名刺に入っています。

■デザインと真剣に向き合う

「お前のデザインだとコンペに勝てない」
なにくそ!と、思った瞬間です。
悔しい、苦い思い出と同時に、自分のデザインレベルを認識した一言でした。
 
WEBデザイナーが作るデザインには価値がある。
 
昨今WEBサイトを作る事は昔みたいに難しいものではありません。
ツールやネットを駆使するればWEBサイトを公開することは可能です。
デザインに関しても、参考書が沢山でており、WEBデザインが特別なものでは
なくなってきていると思います。
 
プロと素人の差が縮まってきている?
 
そんな事はありません。むしろ同じ感覚ではいけません。
WEBデザイナーが表現するものには、意味があり、価値がうまれます。
 
その為にも、デザインと真剣に向き合う事が必要だと思います。
考える事、調べる事、なぜと思う事。
一つ一つのプロセスを大事にすることで、デザインへの責任が自然と生じると思います。
 
これがプロと素人との差だと思います。
 
■センスと経験
かっこいい。注目されたい。人には真似できない。そんなWEBサイトを作りたい。
自分がWEBサイトを作り始めた頃いつも考えていたことです。
これを実現するには絵が描ける事が必要だよな。とか、やっぱりイラストが描けないと
オリジナリティは出せないよな。とか、写真の知識は絶対にいる!など、素材に対して
熱く考えていました。
もちろん、これは重要な事だと思います。PhotoshopやIllustratorにふれ、素材を加工する
面白さやイラストレイターで作る曲線美な素材をどうにかしてWEBサイトの中で表現できないか
考えたものです。
 
目指せ素材作りのプロフェッショナル!・・・あれ、なんか違わないか?
 
素材というアイテム作りに注力し、全体が見えてない状態です。
そんな状態に気づく事無く違和感を解決する為、参考サイトを探しては何が違うのかを研究していました。
参考サイトを見ることでヒントを拾えればいいのですが、参考サイトに圧倒されると「センスが違う」という
感覚で別次元の存在として見ていた様な気がします。
 
自分に無理だ。例えるなら「高嶺の花」
 
確かに「センス」というのはあると思います。
なんとも言えない心地良さ、おさまりの良さ、奇抜だけど崩壊はしていない、ダイナミックな世界観、
ありえない組み合わせだけどバランスがいい。中には言葉で表現できない感動が「センス」によって
表現されているかもしません。
 
センスってすごいですね。
 
類稀な感覚とデザインが合わさる事で
他人には真似できない表現をする人もいると思います。
 
しかし、そうでない人もセンスを高める事は可能です。
センスを高める方法は経験だと思います。
それもアクティブな経験です。インプットとアウトプット。ライフスタイルに習慣。など、
日常を通してセンスについて考える必要があるのではないかと思います。
 
神のようなセンスがないのであれば、沢山の引き出しを準備して必要に応じた組み合わせを
行う事で理想のセンスに近づく事が出来ると思います。
引き出しと組み合わせ。このバリエーションこそ経験に基づくものだと思います。
 
他の人に見てもらう。
 
制作物は出来るだけ人に見てもらう事を心がける。これは自己満足で終わらない為と、
制作物を評価するのは自分ではなく、自分以外の人である事が多い為です。
 
しっかり積み上げた経験には自然とセンスもついてくる思います。
私はそう信じています。
 
■論理的なレイアウト
次はレイアウトについてです。
先ほどのセンスの話の中でも触れましたが、WEBデザイナー駆け出しの頃はレイアウトより、
素材のクオリティを必死に追いかけていた気がします。
素材を作る上で大事にしていたことは質感、リアリティ、アクア感、しずる感など、ボタンとしての視認性など
WEBサイトを作成していくなかでは、どれも重要な要素だと思います。
 
全体のバランスが大事
 
綺麗な素材や素朴な素材があったとしても、それをうまく「配置」しないとWEBサイト全体のイメージが
崩れてしまいます。
そこでWEBサイトのhome画面(TOPページ)ラフイメージを作成します。この時は注意するのは、何を
どこに配置するか、それによって全体のバランスはどうなるか。シミュレーションしながら
レイアウトを作成することです。
 
今ではある程度レイアウトのパターンを紹介したサイトなどもあるので、そういうサイトを
参考にするもの良いと思います。
 
レイアウトのラフがある程度見えたら、ヘッダーの領域とロゴの位置関係や大きさ、基調色とアクセントカラーのバランス、
グラデーションの使い所に、ベベルとエンボス感の調整、ボタンの大きさ、文字の視認性、バナーの配置場所、
コンテンツエリアなど、一つ一つを出来るだけ論理的に考えながら配置してくことで、導線、視認性に、アクセントを
まとめることが出来ると思います。
 
土台(レイアウト)をしっかりイメージ。その上で素材は華開く。
 
番外編
たまにはセンスに任せて、レイアウトすることもおすすめします。
発想を変える、デザインする、好き、いいじゃん、を追求してみる。テーマは自由。
あまり頭は使わず、想いのままに、イメージのままに。
 
気分はアーティスト!
 
気持ちが落ち着いたら、自分が作ったものと向き合う事で見えること。
苦笑かドヤ顔か、さてどっちなのでしょうか。
 
 
■「商業的」からの一歩前へ
経験を積み重ねる事で自分の「スタイル」というのが見えてくると思います。
得意なジャンヌや、レイアウト、テイストなど人様々だと思います。
それと同時に、ちょっとしたマンネリも現れる頃です。
 
「この時はこのパターンだな」実績という落とし穴
 
採用された実績は「商業的」に使えるという引き出しに格納されると思います。
格納されていく実績はどれも自分の武器。伝家の宝刀!と、まではいかないでも
このテイストでいけば受けは上々、修正を最小限に抑えられるなど「大丈夫なパターン」という得意技できると思います。
しかし、そのパターンを振り返ってみると、どれもなんとなく似たり寄ったりな事に気がつくかも
しれません。
 
得意な事を伸ばす事は大切。得意な事を壊すのも大事。
 
もし、マンネリを感じたらちょっと型を崩してみる、遊んでみる、バランスを変えてみる。など
実績をいじみってはいかがでしょうか。
これまでの実績と、どことなく似ているけどなんとなく違う。この、なんとなくが自分ならではの
オリジナリティかもしれません。そう思うことがあれば商業的カタチに+アルファが加わった瞬間です。
 
 
■「なぜ」と思う事
厚みがでる、主張する、攻めのデザイン時に欠かせない「なぜ」という発想。
セオリーを中心にWEBデザインを行う時は「なぜ」ということを忘れがちになります。
なぜなら、「なぜ」という発想もある程度パッケージされているのがセオリーだからです。
 
セオリー通りにすれば、おおよそは当たり障りの無いカタチで事が進行していくと思います。
時間に追われながら日々の業務をこなしていく中でセオリーを駆使するのは大変重要だと思います。
 
WEBデザイナー
 
デザイナーと肩書きをついているなら、セオリーばかりに頼っていては成長はしないかもしれません。
かといって、セオリーから外れるリスクは、プレッシャーとして自身に返ってきます。
このプレッシャーがポジティブに作用すればいいのですが、皆がポジティブに受け止める事ができるかと
いえば難しい様に思います。
 
「なぜ」と考え、理由と目的を持つこと
 
なぜそうしたかという説明が出来る事柄はデザインに厚みがでる他、要素の意志を伝える事ができます。
なんとなくこうしたら、更によくなった。理由と目的は後付でもかまいません。
後から「なぜそう感じ、そう思ったのか」を考えればいいと思います。
 
セオリーでまとめるデザインと、なぜを追求した攻めのデザイン、状況に応じてどちらも使い
こなしたいですね。
更に、一般的にセオリーと呼ばれるモノ自体に「なぜ」を問いかけてみるもの新しい発見があるかもしれません。
 
■修正と向きあう
例外的な修正は別として、クオリティを高める上で修正はなくてはならないもの
 
修正指示を出す人は誰か、どのポジションの人が修正の指示をだしているか。
これを把握する事は大事な事だと思います。
社内の修正指示なのか、クライアントからの修正指示なのか。
もし、クライアント側の確認プロセスが複雑な場合は、修正内容が2点、3点することも予想されます。
 
例え同じ目標を持つ者どうしでも、デザインという感覚はひとそれぞれ違うもの
 
時には「鶴の一声」という修正指示もあります。今までの経験から、これは厄介です。
 
例外的な指示は別として、進行段階で生まれる修正については、
出来るだけ柔軟に対応していくことが望ましいと思います。
 
自分はデザイナーであり、自分が表現するものは間違いない。と、思って作ることはいい事だと思います。
自信の無いデザインは何かつっこまれと、もろく崩れてしまうものです。それよりも、自信をもって
提出する方が伝えられる印象は良くなると思います。
 
修正に関しては真摯に受け止めるべき

先にも述べましたが「デザインの感覚はひとそれぞれ」あり、自分では気がついていない箇所を
指摘してもらっていることが多いからです。
 
修正の内容によっては、自分が作ったものを否定されるような内容もあります。
「この人はデザインをわかっていない。」と、思う前に「なぜ」このサイトを作っているのか、
どういう意図でデザインをしているのか。ということを思い起こした上で、修正指示について
考える癖をつける事が必要だと思います。
 
表現したい気持ちが前走、サイトを制作する意図を見失うことは、駆け出しの頃によくあることです。
 
サイト、ページを作成する意図を把握している場合は、修正指示に対して冷静な見方が出来ます。
その為、修正指示自体が適切でないという事も分かってきます。その様な時は、再度そのサイト、
ページを作成する意図を確認したり、意思疎通を確かめる事も重要です。
 
すべての修正を後ろ向きに捉えるではなく、クオリティを高める為に修正は必要不可欠要素だと
認識することが、大切だと思います。
 
■困った時の一言
「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない」
「につまったら、振り出しに戻る」